『名曲喫茶 月草』を閉店しました

こんにちは。『名曲喫茶月草』の店主、イツキです。
今日は皆さまに大切なお知らせがあります。

本日、2020年12月12日をもちまして、8年間営んできた『名曲喫茶月草』を閉店しました。

コロナの影響と思われる方もきっといらっしゃるかもしれませんが、この閉店に関してはそれが理由ではなく、昨年の秋頃から決めていたことなのです。その理由を簡単に述べると、「この店で過ごしてきた時間に区切りをつけて、新たな挑戦をしていきたい」というものですが……閉店する時期に関してはずいぶん迷っておりました。
そんな中、春からコロナ渦に入り、長期休業しながら改めて考えた結果、このタイミングで閉店をお知らせする運びとなりました。
今日はご報告とご挨拶を兼ねて、ざっと書いてみます。宜しければお付き合いくださいませ。

開店の思い出

8年前(2012年の7月12日)、名曲喫茶『月草』を開店したことは自分にとって大きな挑戦だったように思います。

「挑戦」と言うといささか大袈裟かもしれませんが、「名曲喫茶」という、あまりに古典的かつ、特殊な喫茶店を新規でオープンし、マニアックなクラシックファンが多いであろうお客さまに満足して頂くことはできるのか? そんな不安は正直、かなり大きかったです。

しかし、かねてより「名曲喫茶」とクラシック音楽が好きだった僕は、30代半ばで人生の岐路を迎えた時、どうしても自分自身の手で名曲喫茶をやらねばという気がしていました。だから、選択の余地はなかったように思います。

また、僕はカフェや喫茶店を新規で開店される方と比べると、いくつかの点でずいぶん恵まれていました。

もっとも大きかったのは、母親がその場所で長く『cafe flowers』を営んでいたことが挙げられます。僕も若かりし頃からデスクワークの傍ら、その店を10年以上手伝っておりまして、そこでの経験を生かすことができました。(『flowers』での忘れ難い思い出もずいぶんたくさんあるのですが……こちらはまた別の機会に)。

『cafe flowers』は日中ほとんど空いていたこともあって、2012年の春、僕はその場所に名曲喫茶を開きたいと母にお願いしました。(その経緯はこちらの記事をお読み頂ければ幸いです。以前、国立のローカルメディアさんに良い記事を作って頂きました)

母の快諾を得ると、カウンターを改造してレコードが1000枚以上収まる棚をこしらえ、内装もだいぶ変えて、自分が思う名曲喫茶的な空間を数ヶ月で作りました。相当ドタバタでしたが、タイミング的にも条件的にも、やはり自分は恵まれていたと思う他ありません。

ただ名曲喫茶を始めた手前、「まともな名曲喫茶」をやらなければならないというプレッシャーはかなりありました。「まともな名曲喫茶」というのは、名曲喫茶を愛するお客さまが(あるいはふらりと立ち寄ったお客さまが)喧騒から離れて静かに憩える、クラシック音楽がいつでも鳴っている場所です。

開店から現在まで

そうして8年があっという間に経過しました。ここには書ききれないようなエピソードもずいぶんたくさんあります(今後、少しずつ紹介していけたらと思っています)。
大好きな雑誌や書籍に取材・紹介して頂いたり、憧れだった『渋谷ライオン』の方々と交流を持てたことも良い思い出です。
ワーナー・クラシックに勤めていた友人の推薦で、ヘルベルト・フォン・カラヤンの没後25周年記念ベストアルバムを選曲させてもらったことも得難い経験となりました。

はたして、自分が思うような「まともな名曲喫茶」ができたのかどうかはわかりません(「それはひとりひとりのお客さまが判断することだから」とだんだん思えるようになりました)。ただ、自分が思っていたよりもずっとたくさんのお客さまに足を運んで頂いたことには店を日々開けるうえで、本当に、深く励まされました。

何より、現代でも、クラシック音楽と静かな名曲喫茶を望まれている方はしっかり存在するのだ——その事実が確認できただけでも、店を開けた甲斐はあったと思っています。
僕はいつかまた名曲喫茶(的な空間)を——どういった形になるかはまだわかりませんが——何処かに開きたいと考えています。その時、当店にいらしてくださった方々と再会できることを心より楽しみにしています。

最後に。
多大な協力をしてくれた母と、幼少期にお世話になった『名曲ジュピター』のマダム、そして足繁く通ってくださったお客さま、当店に心を留めてくださった方々に心からの感謝を捧げます。

また何か新しいことを始める際は、これからも当サイトにアップしていきます。ネットラジオやクラシックに関する文筆も続けていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。

8年間、『名曲喫茶月草』をありがとうございました。
皆さまのご健勝とご多幸を心よりお祈りしています。クラシック音楽と憩いが、いつでも皆さまのそばにありますように。

名曲喫茶月草 堀内愛月
lovemoondelic@gmal.com(何かありましたら、こちらまでお気軽にご連絡ください)

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