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バンクーバー道中記②「バンクーバーそぞろ歩き」

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徹夜明けの妙なハイテンションで、バンクーバーの大通り「ロブソン・ストリート」を闊歩する。
グッチ、エルメス、シャネル、ヴィトンの店舗が日本で見るよりも巨大、かつ艶光りして見える。
中心部の雰囲気は(日本人らしい喩えで申し訳ないけど)銀座に比較的近いと感じた。ストリートにいちいち名前が付いていて、歩道が広く、ブランド店も昔ながらの店も高層ビルも渾然一体となっているところが。
ただ、銀座よりも各ストリートの特徴がはっきりしていて、店舗のバリエーションもずっと雑多である。ウィンドウの外まで光輝を放っているようなブティックの横に、いかにも怪しげなパブがシャッターを下ろしていたり、夜逃げ直後のような打ち捨てられたままになっている店もそこかしこに点在している。トータル・イメージにそこまで神経質ではないのだ。

「一切合切ありありと混在している」それがバンクーバーから受けた第一印象。
人種、店、カルチャー、ファッション、レストラン——それぞれの醸し出すカラーが交じり合い、混ざり合い、溶け合わず、「バンクーバー」という壮大な街の絵が立ち現れる。結果、その絵は東京にもロンドンにも全く似ていない。

ガイドのKさんに聞いた通り、街中にはホームレスたちの姿がずいぶん目立つ。
と言っても日本のホームレスとは雰囲気がかなり違う。いきなり歩道の真ん中に寝ていたり、ホテル内のスタバにやおら入ってきて各テーブルを回っては「コーヒー代をくれ」とストレートに要求したり、歩道で懺悔する殉教者のような姿勢のまま(手にはフレスコのような容器を掲げている)石像のように固まっていたり。服装もただ汚れているのではなくて、お洒落な人が多かった。

たとえば宿泊したホテル近くで黒ぶちの大型犬と一緒に寝ていたホームレス男性。かなり若そうだった。犬はぴたりと彼のそばから離れずに寝ていた(あるいは寝たふりをしていた)。犬もひもじげな様子である。
「何か、あなたとP(3年前に他界した愛猫)みたいね……」。そう言って母は犬の近くに硬貨を置いた。犬の餌代くらいにはなるだろうか。

大通りを左に逸れ、しばらく歩いていると「ギャスタウン」(バンクーバー最古の通り)に出る。

一転して、いかにもアンダーグラウンドな空気が漂っている。母が目星をつけていたカフェ『ピュア・ブレッド』という店に入ってみるも、パンが全部甘そうなデニッシュ系だったので何も買わずに出た。他のカフェにも行ってみたのだけど、どうもピンとこない。具体的には、野菜とチーズのさっぱりしたサンドイッチが食べたい。 

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ギャスタウン時計台前

歩いていると、そこかしこからジョイント(紙巻き大麻煙草)の香りが漂ってくる。
そう、カナダは大麻が合法化されたばかり(2017年施行)。その代わり(?)路上喫煙にはかなり厳しいことになっているはずだが、見たところ「ゆるゆる」というか、東京よりも路上喫煙者の数は明らかに多い。しかも喫煙者の半分以上はジョイントユーザーのようだ。
ついさっきも、目の前でスキンヘッドの男性がマクドナルドのコーヒー片手にジョイントをいかにも旨そうに喫っていた。ジョイントユーザー人はすぐにわかる。匂いが「これしかない」というくらい強烈だし、高揚したような、充血した目つきをしていることが多いから。
ただ、日本の酔っ払いのようにあからさまに騒いだりしている者はほとんど見受けられない。「静かにハイになっています」という感じ。その感じ、傍から見ていても「悪くない」。

大麻解禁から約2年。カンナビス(大麻)がこの街の暮らしに自然に息づいている、あるいは息づき始めていることがバンクーバーをそぞろ歩いているだけで肌に(あるいは鼻腔に)伝わる。もし同じことが日本で為されたら即刻逮捕されて牢獄行きになることを思うと変な気持ちになる。
(なお、僕自身は日本国内で大麻の所持使用が未だ違法であることに賛成である。日本人では大麻を解禁できるようなリテラシーと土壌がまだ形成されていないように思うから。「いずれなったらいい」くらいには思っているけれど、おそらく相当長い時間がかかることだろう)

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リカーショップ『BC LIQUOR STORE』前

そして大麻とは逆に、カナダにおける「酒」の扱いの厳重さは想像以上だった。
いちいち日本と比較するのも何だけど、缶ビールやストロングゼロを片手にしている輩など、旅行中1人も見かけなかった。
まあ、そうだよな、とも思う。大麻の方がずっと持ち運びやすく、安価に楽しめるこの国で「屋外で酒を飲む」という違法行為をわざわざ犯そうとは思わないのだろう。
ちなみにコンビニにも酒類は一切置いていない。酒を買ってこようと思ったら、営業時間内に数少ないリカーショップに足を運ぶしかない(おかげで初日の夜は寝酒を買うことができず、うまく眠ることができなかった)。
酒が飲める、深夜まで営業している飲食店もかなり少なそうだ。宿泊しているホテルのバーはおそらく高くつくだろうから、近くで気軽に酒が飲めるカフェやバーを探しておきたい。

さて、(僕にとって重要な嗜好品である)コーヒーはどうか。
実は今、ホテル1階のスタバでコーヒーを飲みながらこれを書いているのだけど、日本では極力避けているスタバのコーヒーが、なんだかとってもおいしいのである。スタバのコーヒーがおいしいのはやはり妙な感じがするものだ。これはこの先コーヒーに関しては相当期待できるということかもしれんぞ……ふふふ(と胸を膨らませるのだった)。

バンクーバー滞在初日はスピーディーに過ぎていく。
結局、我々親子は2時間近く市内をさまよったものの、「これぞ」というカフェを見つけることができず、勝手知ったる『サブウェイ』に入った。なぜカナダでわざわざサブウェイに? 空腹だったし、何より足的に限界だったのだ。
サブウェイのサンドイッチは日本と比べて明らかにおいしくなかった。パンがぼそぼそしているし、野菜もあまり新鮮ではなさそうな味。少なくともサブウェイに関しては、僕の住んでいる街の圧勝やな……。
そんなことを思いながらふらふらのていで部屋に戻り、スタバで買ってきた熟れすぎたバナナを半分食べ、夕方までひと眠りした。(続きます!)

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